「生きる力」を育む療育
「発達障害児の40~80%がいじめ被害者」といわれるこの現実に、どう立ち向かうのか。
目まぐるしいスピードで変化する社会を生きる子どもたちに求められているのは、
変化に対応し「続ける」力、
困難・逆境に負けず、課題を解決し「続ける」力、
そして人生に楽しみを見出し「続ける」力です。
[1]学力の基礎
戦後の詰め込み教育からゆとり教育、そして脱・ゆとり教育へ。教育行政の変遷に見てとれるように、基礎学力の重要性については、すでに国民的コンセンサスが得られています。しかし、残念ながら障害児に対しては、「障害があるんだから、無理して勉強しなくていい」「毎日笑って暮らせればそれでいい」と、最初から諦めてはばからない、悪意なき支援者が多いのも現実です。
勉強なんてしなくても、毎日心から笑って暮らせるのであれば、確かにそれでいいのかもしれません。でも、先生の話がまるで分らないのに、不安になりもせず、授業の間じゅう笑って過ごせるものでしょうか。仮に今日は笑っていられたとして、明日も、明後日も、5年後も20年後も、社会の中でずっと笑っていられるのでしょうか。はたしてその笑顔は、「生きる喜び」と呼ぶにふさわしい幸せがもたらしたものなのでしょうか。
たとえば、有名な『幸福論』を著したスイスの法学者・カール・ヒルティは、「人を幸福にするのは労作と成功の喜び」であり、「人生で最大の不幸は、仕事を持てないこと」と説きました。私たちも、「生きる喜び」は、ただ楽しいことをするだけで味わえるものではないと考えます。昨日よりも今日、今日よりも明日、ひとつでも多くできることを増やしていこうとする営みのなかで、子どもたちに本当の喜びを感じてほしいと願っています。
ひとりひとりに合う「方法」をさがします
私たちは、教科学習がうまく進まないのは、「方法が違っている」か「練習が足りない」と考えます。「これがダメならそれ」「それがダメならあれ」・・・試行錯誤=トライアル・アンド・エラーを繰り返し、ひとりひとりに合う方法をさがしていきます。
良い方法がすぐに見つかることもあれば、残念ながら、時間がかかることもあります。そうしたとき、本人はもとより、保護者の方のがっかりしたお顔を拝見することがあります。でも、どうすればいいかわからない、雲をつかむような状態だったところから、少なくとも「あの方法」と「この方法」は違うとわかったことは、実は大きな前進なのです。次は「あの方法」でも「この方法」でもないチャレンジを繰り返すことで、成功確率は確実に上がってゆくのです。
「エラー」は「失敗」ではありません。チャレンジした結果に「失敗」などありません。小さな一歩だったか大きな一歩だったかの違いがあるだけで、どのチャレンジも、すべて等しく「成功」に向かっていることに変わりはないのです。
「基礎学力」の前に、まず「学力の基礎」
私たちの事業所を訪ねてくる子どもたちの多くは、見たり、聞いたり、覚えたり、想像したりする力に少なからず困難を抱えています。例えば、ものを見る力の弱さは、文字の読み飛ばしや逐次読み・勝手読みなど「読む」力の問題、漢字が覚えられなかったり黒板の文字をノートに書き写すことができない「書く」力の問題、つまり、学力面の困難に直結しています。情報を正確に把握できないと、コミュニケーションエラーが起こりやすいため、人間関係や社会性の問題にも発展していきますし、もちろん、動体視力・周辺視・深視力・集中力が問われる運動能力にも影響します。
そこで、チャレンジ・キッズでは、生きる力の土台となる「基礎学力」をさらに下支えする、「学力の基礎」ともいうべき構成要素に着目し、スモールステップでトレーニングするプログラムを提供しています。特に視覚関連基礎スキルや読解能力については、定期的に検査・アセスメントし、弱点やトレーニングの効果についてフィードバックすることが可能です。
[2]ソーシャルスキル
ソーシャルスキルとは、他者と良好な関係を築き、維持していく技術です。脳の中枢神経系の機能障害を抱える子どもたちは、情報処理過程につまずきがあり、感情コントロールにも問題を抱えがちです。そのため、対人関係がうまく結べず、社会的場面への参加も少なくなる傾向にあり、ソーシャルスキルの学び損ないが起きやすくなります。ソーシャルスキルの学び損ないは、社会的場面への参加を縮小させ、さらに学び損ないが拡大されるという、負の連鎖がみられます。
そこで、あらかじめ
①ルールを守る
②人の話を注意して聞く
③相手にわかるように伝える
④自分の気持ちをコントロールする
といった、「人付き合いのスキル」を、具体的に教え、練習を積み重ねていく必要が生じます。
また近年は、スマホやゲーム依存、SNSトラブルも大きな問題になっています。ネット上の情報の正確性をジャッジし、取捨選択する方法、電子商取引に正しく対処する方法、利用料金や時間に自制心を発揮すること、プライバシー保護やセキュリティ対策の講じ方についても、系統だてて学ぶ機会が必要です。
チャレンジ・キッズでは、構成的SST(あらかじめ具体的なテーマを設定し、学ぶ)と、非構成的SST(指導者や友達とのかかわりのなかで学ぶ)をおりまぜて、応用行動分析学に基づいて個別・集団で支援しています。
心の理論
社会生活に必要な、他人の考えや感情を理解すること、情報から推察する能力を「Theory of Mind(心の理論)」と呼びます。
「仲間はずれにされる子」「独りよがりの子」「周りの人の言動をうまくキャッチできない子」のなかには、心の理論に遅れがみられる場合があります。ご希望の方には、心の理論検査を行うことができます。
[3]フィナンシャルリテラシー
フィナンシャルリテラシーとは、「お金について理解し、適切に意思決定し行動する」スキルのことです。
残念ながら日本では義務教育でカバーされてこなかったため、米国の有力格付け会社(S&P)の調査において、「日本国民の半数以上はフィナンシャルリテラシーがない」という、残念な結果が示されています。
チャレンジ・キッズでは、日々の療育やゲームを通じて、お小遣いやお年玉の使い方から、ひいては社会におけるお金の流れまで、実践的に学びます。自分らしく人生を楽しんで生きるのに、いったいどれほどのお金が必要で、どうすればそのお金を得て、資産として守っていくことができるのか。フィナンシャルプランナーから生きたお金の知識を学ぶ機会もご用意し、ひとりひとり異なる“こたえ”を見つけていくお手伝いをしています。